寓話が必要だ

ある村にひとりのおとこがいました。

 

おとこの家にはまいばん ふしぎな霧がやってくるのです。

 

この霧につつまれるとこごえるようにさむくて、おとこはいつもこの霧にくるしんでいました。

 

これにたえかね、ある日おとこは村人に助けをもとめました。

 

しかし村人はだれも相手にしません。

 

頭がおかしくなったのだろうと遠まきにして、だれもかかわろうとしません。

 

ある者はおとこに石を投げつけたりしました。

 

また金をはらえば助けてやるといって金をだましとった者もいました。

 

おとこは苦しみぬいたすえ、ついに霧の正体をしりました。

 

しかしおとこの話をきく村人はいません。

 

おとこは村を出て、近くの山のあばらやに住みだしました。

 

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やがてつめたい霧はおとこの家だけではなく、村じゅうをおそうようになりました。

 

村人はこの霧にくるしみ、災いだとおそれました。

 

ある者はたおれ、ある者はしごとができなくなりました。家から出ることもできなくなりました。

 

村人はきとうしにすがり、きとうしがつくったお守りをみなが身につけるようになりました。

 

村はやがて押しだまったようになりました。

 

おとこはそのようすを山からただぼうっとながめていました。

 

(おしまい)